Power Line Communications

最近、PLC (Power Line Communications 電力線搬送通信)が日本で話題らしい。
要するにLANの線をひっぱるのが面倒だからコンセントを使いましょうって装置のお話。

家の中でネットワークを組む場合、今まではLANケーブルをひっぱりまわすか、無線LANを設置するかという選択であった。LANケーブルをひっぱりまわすのは確かに面倒である。無線LANは速度や接続が不安定の可能性もある。そこで登場したのが、電力線、すなわちコンセントの電線は既に敷設されているのだから、こいつを使ってパソコンのデータ通信を行ったら楽チンじゃん。

実はこれは技術的にはそれほど難しい話ではない。電線なんだから信号を流し込めば通信ができる。しかしここで大きな問題が発生してしまった。

確かに通信はできるんだけど、コンセントにはさまざまな機器が繋がっている。ドライヤーやら電子レンジ、冷蔵庫、テレビ、蛍光灯などの電灯。まぁ家の中の電気を使うほとんどの機器が繋がっている。ぶっちゃけて言ってしまえば、凄い量の妨害の中で通信しているようなものである。ということで、実用的にするには、妨害に打ち勝つだけの強力な信号を流し込む必要がある。

妨害に打ち勝つだけの強力な信号を流し込むことにより、他のコンセントに繋がっている精密機器に影響を与える可能性が出てきている。

それに加え、当然、電力線は信号を通すように作られていはいない。電力線なんだから、電気を流すようにしか作られていない。電気を流すつもりの電線に、信号を流し込むんだから、ちゃんと流れるわけがなく、かなりの信号がもれ出てしまうのである。穴の開いたホースに水を流し込んでいるようなものである。

もれでた信号がどうなるか。これは一部は電波として放出される。知っている人は知っているかもしれないが、実は電力線は、かなり優秀なアンテナである。通常、信号を流すための電線は、金網でくるまれていたり、アルミ箔で包まれたりして、電波としてもれないような仕組みになっているが、電力線はただの銅線である。それも家中に張り巡らされた電線。ここから一斉に信号が電波としてもれ始めるのである。

もれ始めた電波が無線通信に影響を与えることがわかっている。具体的には2M~30MHzの電波を使用する無線通信に影響を与える。

電波というのは有限の資源である。土地と同じであり、国家政府によって管理されている。例えばFMラジオであれば、80MHzという周波数を放送局が国から割り当てられ、その周波数を使って放送している。すべての無線通信も同様である。普段使い慣れている携帯電話も、携帯電話会社が国から周波数を割り当てられ、その範囲内で携帯電話通信を行っているわけである。最近でいえば、ソフトバンクがその割り当てをもらえないと騒いだ事件があるので、覚えている人もいるだろう。

2M~30MHzといえばかなり広い範囲の周波数である。FMラジオで言えば、全FMラジオ放送あわせても、70MHz~90MHz。AMラジオに至っては0.5MHz~1.6MHzしかない。2Mから30MHzの妨害電波となればかなり広範囲にわたる問題を引き起こす。具体的には、船舶航空無線、短波ラジオ、電波天文観測、アマチュア無線などに影響を与える。

まわりに影響を与えないように、信号を弱くしたら、最初の問題、妨害に負けてしまってぜんぜん通信ができない。んじゃって信号を強くしたら、いろんな人に迷惑をかける。

これに話をややこしくしているのが、普通、妨害電波を自分が出していてもまったく気がつかないという点である。いくら装置から電波が漏れなくても、家に持って帰ってつなぐ先は、壁に埋まった電線。壁に埋まった電線がだぁだぁ電波を漏らしても、まったく気がつかない。

一戸建ての家ならまだしも、アパートであれば、隣の家の電話線に影響を与えるかもしれないし、電波天文観測では、400Km圏内に1軒でもPLCからもれ出る電波があったら観測にならないと言われている。

んじゃ、電波が漏れないように信号を流しても大丈夫な電線に交換しましょうってやったら、そんなことするくらいなら、LANのケーブルを引いたほうが楽です。

興味深いことに、これらの責任は売った側ではなく、所有者、使った側にあるとなっています。もしあなたがPLCを使っていて誰かに迷惑をかけた場合、あなたの責任になります。日本の法律上そうなっています。コピー機を買って違法コピーをやったらコピー機を売った人が悪いわけじゃなくて違法コピーをやった人が捕まるのと同じ論理です。

さて、電力線ということで気が付いた人もいるかもしれませんが、電線は家の外まで出て行っています。あなたの漏らした信号が、家の外のどこまで出て行っていて、どんな人に迷惑をかけるのか予想できません。それらに対して責任を取ることが可能ですか?またそれらを防止するための対策は十分にできますか?

まぁ対策も何も使った時点で、その家では短波ラジオは聞こえなくなるらしいです。。。。

電波って結構使うの難しいです。だから免許なんです。アマチュア無線の免許なんて持っちゃってて中途半端な知識があるもんで、なんとなく不安を感じている今日この頃。PLC使うならシールド線で電力線を配線した家がいいなぁ。

電車の中の携帯電話と同じですよ。影響がある可能性が高い。でも誰も気にしてない。んでもまぁマナーだし。みたいな感覚でしょうか。妨害電波を出しててそれがマナー違反とかそうゆうレベルじゃないと思うんですけど。

まぁどっちにしてもLANなら100Mbpsから1000Mbpsでるし、無線LANでも11Mbps出せる。電力線を使ったPLCではいろんな問題があるにもかかわらず、30Mbpsどまり。ま、もちろんもっと問題を広げるならもっと高速通信もできるけど。少なくとも僕は、現時点ではあんまりお勧めしないなぁ。

今更なんだよねぇ。。。

新しく建てる家なら、LANの配線と無線LANを考慮した間取りは、やっぱりねぇ。

もう一個違う形のコンセントを作る?

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください