独身寮

僕は4年ほど独身寮で生活した経験がある。

大学生のとき、少しだけ規模の大きなテニスサークルに参加(運営?)していた。大学生のサークルだけあって、毎年春になると数十人の新入生がサークルに入ってくる。毎年、新しく数十人の知り合いが増えるわけである。

それ以外にもバイトの友達なども入れ替わり立ち代り。友達はどんどん増えていった。

大学を卒業して上京して就職して、独身寮に入った。

入社した当初は、社内の先輩やら上司やらと新しい出会いがあった。名前を覚えるのも仕事のやり方を覚えるのも大変だった。

会社の同期の連中と一緒になって、仕事帰りに飯を食い、独身寮に帰って、寮で麻雀をやったり、ゲームをやったり、飲み会をしたりした。
独身寮だけに、会社の先輩も住んでおり、飲み会などには先輩も混ざっていた。

1年目が過ぎ、2年目が過ぎると仕事にも慣れてきた。新入社員は入ってくるが、多くても十数人。開発という仕事柄、一緒に仕事をする社外の人もそれほどたくさんいるわけでもなく、大体メンバーは固定されている。

う~ん。社会人になると出会いって少ないよなぁ。と感じ始めた。

女性の先輩に言わせると、「男の人はいいよねぇ。毎年年下の女の子が入ってくるから。女の立場から見ると、会社での出会いって、ほとんどなくて、新入社員も年下ばっかりなんだよねぇ。」

会社で見るメンバーはいつも固定。家に帰っても、当然独身寮だけに、会社で見るメンバーとあまり代わり映えがしない。

だんだん、開発の仕事でもリーダーをやるようになり、周りを見ても、技術的に負ける気がしなくなってくる。

俺、このままだと、この枠より上に上がれない気がする。

一旦、そんなことを考えると、非常に恐怖になってくる。自分の一生がこの枠の中で終わるのかもしれないと考えると、いてもたってもいられなくなってくる。無性に自分のスキルが不安になり、技術系本を読んだり、実験プログラムを家で書いたりしたのは、この時期である。周りの連中が、仕事を終わって同期と飲み会してたり、麻雀してたりしても、あんまり参加しなくなった。おまえらと一緒になって、同じ枠の中で生活したくない、という思いが強くなった。

大学時代の友人の助けもあり、東京でテニスのサークルに加入した。新たな出会いがたくさんあった。異業種の人たちや、同業種でも違う会社の人たちといろいろ話をすることができた。

一番忙しかったのはこの時期だと思う。

仕事ももちろん忙しかったが、家に帰っては本を読んだり、テストプログラムを書いたり、休日はあっちに出かけてテニスをしたり、こっちにでかけてスキーをやったり。

自分が枠の外側を覗いている気がしたし、枠の外側から、枠を眺めてみると、あそこに、はまり込んでいる自分が客観的にみられて、面白かった。

会社の同僚が、休日も忙しく働いているのを横目に、おめえらとは違うんだよと、変な優越感に浸ってたりした。

まぁそんなこんなで、転職し、移民することで、独身寮からでちゃったわけだが、今考えてみても、独身寮って異様な空間だったと思う。

確かに、初めて上京して一人暮らしを始めたときは、まわりが知っている人ばかりというのは安心だったし、家賃の優遇が受けられていたのは、メリットだった。会社の先輩からいろんな話を聞けるのも勉強になった。それらの福利厚生や給料も含めて待遇って言うんだろうなって思っていた。

でも、枠の中から抜けられなくなる恐怖があった。右を向いても左を向いても、平日も休日も関係なく、枠の中にいる気がした。

多分、他の人は枠の中にいる感じなんてぜんぜんしなくって、それ以外のところで興味をもって生活してたんだと思うけど、僕は、なんでそんなことばっかり考えてたんだろう。

東京という環境が、すなわち、街に出れば人はいっぱいいるのに、知り合いがほとんどいない環境が、僕にそんな考えを持たせてたのかなぁ。

今でも、やってることはほとんど変わってなくて、別に出会いがいっぱいある環境にいるわけでもなく。。。でも、あんまりそんなこと考えなくなったよな。

以前と明らかに違うのは、自分が思っているよりも、周りは自分のことを気にしていないということが理解できるようになったこと。

年食ったのかな。

「独身寮」への1件のフィードバック

  1. 私も今月より共同生活をするようになりました。。
    他人が一緒に生活するって結構大変ですね。
    自分が出せてくつろげる空間がお家なのになぁーって思います。
    どの位自分をさらけだすべきですかねーー

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