ラーメン1杯2200円

最近、NYでラーメン1杯2200円ってのが日本の物価安の話で引き合いに出てるみたいだけど、これ、ちょっとミスリードしてる気がする。

いや、僕も個人的に、日本の物価が安いと感じる。アメリカの物価が高い、特にNYやLAやサンフランシスコの物価が高いって感じる。元記事の話も同意する部分はいっぱいある。

でもそこにNYのラーメン、1杯2200円、$1=110円として、まぁ$20のラーメンを引き合いに出すのはちょっとずるい気がする。

まず外食に対する感覚がちょっと違う。

日本にも、ラーメンを出す店には種類がいっぱいあって、カウンター席のみのラーメン屋から、テーブル席がある町の中華料理屋、いわゆる高級中華で出てくるラーメンなどいろいろ。同じラーメンでも出てくる店によって値段は変わる。たとえ同じラーメンでも変わる。客の回転が違うから。

カウンターのみのラーメン屋は、客が座ってカウンター越しに注文、さくっと食って、カウンターに金を置いてごちそうさまでした。

テーブル席がある町の中華料理屋なら、席に着いたら、メニューを持ってきてくれて、注文を取りに来て注文、ラーメン持ってきてくれて、さくっと食って、お勘定、ごちそうさまでした。

日本のラーメン屋のイメージはこんな感じ。

アメリカでもラーメン屋にはいろいろあって、ファストフードスタイルのラーメンだったら、カウンターで注文して自分で席までラーメン運んで食う。食器は食器返却口に返す。このタイプのラーメン屋はそこそこの値段で食べられる。

普通のレストランスタイルだったら、まず入口で何人か伝えて席に案内してもらって、メニューを渡されて、で、注文を取りに来て。で、ラーメンを持ってきてくれて、食って。食ってる最中に、なんか追加注文ないか確認に来てくれて。その後、食器を片付けに来ると同時に、デザート食うか?って聞かれて。まぁデザートって言ってもモチアイスくらいなんだけど。デザート食べないなら伝票持ってきてくれて、カードを渡して、いわゆる席で支払い。で、ごちそうさまでした。

このスタイルがアメリカでいう、いわゆる外食の基本形。これを全部すっとばすなら、ファストフードスタイル。そうじゃなく、この基本形に沿うならレストランスタイル。これ以外のシステムの場合、一般的ではないので、店の入り口でうだうだ説明することになる。

ハワイに丸亀製麺があるのだが、現地の人には丸亀製麺のシステムが全然わからんので店に入れないってのはよく聞く話だ。

この違いだけで値段に差が出るはずだ。

次に出しているラーメンの問題。

店の出すすべての材料がイタリアからの輸入材料ですっていうイタリアパスタのお店を想像してほしい。麺から具から食器に至るまで全部輸入だ。たぶんそんな店は日本にもあるだろうが、たぶん、高級店だ。

ラーメン屋の場合、麺をどこから調達するか、スープはどうやって調達するか。アメリカでラーメンをやる以上、材料の調達は面倒なはずである。もちろん、全部日本から輸入することも可能。ただそれではコストが大変なことになる。と、アメリカで調達できる麵で、アメリカで調達できる煮干しで、アメリカで調達できる豚骨で、となる。全部アメリカで調達できる材料でどうにかしようとしたら、ゼロからラーメンを開発しているのと同じだ。非常にメンドクサイ。

アメリカで煮干しなんて普通のスーパーでは売ってない。中華系スーパーなどで手に入るが、そうゆう意味ではちょっと特殊な材料になる。アメリカでは一般的ではない材料を使ってラーメンはできている。日本と同じコストでは提供できない。

できるだけコストを抑えて、地元調達でラーメンを提供しようとしてもなかなか難しいのである。

ましてや、東海岸NY。実はNYは日本から輸入したものは、アメリカ内でも高い部類に入る。日本からアメリカに船便で輸入したものは一般的に西海岸に届く。そこから5000キロほどトラックで運ばれる。日本から直接東海岸に届くのは航空便くらい。東海岸に船便で届けると、パナマ運河を抜けるか、南米をぐるっと回ってくることとなる。

米ひとつとっても同じだ。日本から輸入すると検疫やら関税やらでしこたまメンドクサイ。でカリフォルニア米。これは歴史的にカリフォルニアに日系移民が日系移民向け、アジア移民向けに栽培していたもの。こいつを西海岸から5000キロ、東海岸まで運んで初めてNYで食べられる。

ちくわは近所のスーパーには売ってないのだよ。アジア系スーパーという専門店でしか手に入らない。

LAとかNYみたいなアジア系スーパーが一般的なエリアだと、アジア系食材の流通が日本と同じくらいあるような錯覚に陥って、アジア系スーパーは輸入食品スーパーだということを忘れがち。

実はこのあたりのノウハウが一番のコストだ。最近のラーメンブームはこのあたりのノウハウの蓄積のたまものにより、日本と同じクオリティのラーメンが提供できるようになってきたという背景が一番だと僕は思っている。

日本のラーメン屋を想像すれば高く感じるわな。

で、NYの家賃。これはもう。。。。

これに加えて、日本の味をそのまま持ってきても、こっちの客がそのまま受け入れてくれるとも限らない。日本からの移民相手に商売ができるほといっぱい移民がいる地域ですら、日本人だけではほとんど商売が成り立たない。日本人少ないです。なんで、ちょっと客層を広げて台湾移民も客層に入れたり、韓国、中華移民も客層に入れたり。

昔日本の定食屋だった店が、久々に行ってみたら、中華料理の店になってましたなんてことはよくある話で。しゃぶしゃぶの店で、昔は昆布だしだけだったのが、気がついたら、白湯やら激辛やらも取り揃えてたり。

日本と同じものが、同じ値段で食べられるわけがない。いや、同じものが食べられるだけでありがたい。

www.yoshinoyaamerika.comを見てほしい。これはアメリカで展開している吉野家のホームページ。日本の吉野家と資本提携があるのかどうか知らないけど、日本の吉野家が食べられる。ただメニューは日本にないものがいっぱい。

日本食ってアメリカで食うと高いのよ。

で、期待してがっかりすることを20年近く繰り返していると、そんなことを考えるようになりました。

「ラーメン1杯2200円」への1件のフィードバック

  1. そうなんです。比較の対象と言うか、方法(やり方?)が、おかしい。
    材料の調達方法や、現地の事情、必要経費考えると、同じメニュー(料理商品)の単価で物価を比べて高いの安いのって、少し考えれば笑止千万、ナンセンスなお話なんだけど、それに気が付いてないというかそうやって騙される方もどうかと思うんだけどね。

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